司書のオススメ図書紹介

当室に所蔵する書籍の中から、司書がオススメ図書をピックアップします。
書籍の見どころや豆知識もご紹介しておりますので、ぜひご利用ください。

過去の図書リストはコチラ(PDFファイル)window open

2017年

 2017/09/19

東京都映画協会

171号(江戸東京博物館メールマガジン 2017/9/15 191号掲載)

 「自然の宝庫 秋の高尾山」「東京の名園 その美を探る」・・・行楽シーズンにも良さそうなこれらのタイトルは、「東京都映画協会」によって製作された行政広報映画のものです。『都映協35年小史』によると、「東京都映画協会」(以下、都映協)は1950(昭和25) 年に東京都の委託によって設立され、「東京都政の宣伝普及や東京都事情の紹介を目的とする『東京ニュース』映画の製作、その他一般文化向上のためにする宣伝映画、文化映画関係業務の公益的推進と、その指導を図ること」を目的としていました。当初は東京都の広報部職員が携わっていましたが、途中から専任職員が採用され、製作配給業務も行っていました。

 都政普及の映画やスライドの企画製作、その他公益団体の広報映画の企画製作、東京都その他公益団体の映画に関して委任された代行業務と、時代とともにその目的や事業内容も変化し、2000(平成12)年3月末に解散しました。 製作された内容は、都政の重点施策や都民に身近な問題を紹介した「1,000万人の話題 (東京ニュース)」、都政の週刊時事ニュース「東京都だより(都民ニュース)」、都政や都民生活にかかわる諸問題をとりあげた「東京レポート(東京テレビだより・東京カメラある記)」、1年間の都政の動きを記録・編集した広報映画「都政記録」等。

 この中でも「1,000万人の話題」は行政映画の草分け的存在であり、地方自治体による行政映画のモデルケースとしての役割もあったようです。当初は都内の主要映画館にて配給・上映されていましたが、その後はテレビ放映に移行し、1977(昭和52)年に映画館での35ミリ版フィルムの上映が復活しています。

 図書室にある都映協が作成した『映画目録』を見ると、冒頭の作品のほかにもたくさんの作品が並んでおり、当時の東京の姿が想像できます。目録にある一部は、図書室と同じ7階にある「映像ライブラリー」でもご覧いただけます。ホームページでは、当館オリジナルの映像作品を中心とした全作品目録に加え、毎月のおすすめ作品を更新していますので、あわせてご利用ください。

 詳細はこちら⇒ http://u0u1.net/FPK0

『都映協35年小史』 東京都映画協会/編 東京都映画協会 1984年 (請求記号:7780 / L47 / 84)

『映画目録 昭和60年度版』 東京都映画協会 (請求記号:7780 / 51 / 1)

『映画目録 昭和61年3月 昭和55年度~59年度』 東京都映画協会 (請求記号:7780 / 51 / 2)

『映画目録 昭和61年7月 昭和25年創立より昭和54年度まで』 東京都映画協会 (請求記号:7780 / 51 / 3)

 2017/08/18

リカちゃん誕生から50年

170号(江戸東京博物館メールマガジン 2017/8/18 190号掲載)

 リカちゃん人形は1967年に誕生し、今年で50周年を迎えました。こどもの頃、おままごとや着せ替え遊びをしたという方も大勢いらっしゃるでしょう。50年経っても年齢は11歳、永遠の小学5年生です。年齢と同様に変わらず、いつの時代も日本のみならず世界中から愛されているリカちゃんですが、変わったところもあります。

  最先端のファッションを着こなし、豪華な洋風の家(リカちゃんハウス)で暮らすという、1960年代のこども達の憧れを体現した初代リカちゃんをはじめ、物質的に満たされた現代では、友達であり時には姉妹のような身近な存在となった4代目リカちゃんまで、時代を反映したリカちゃん人形の変遷を当室所蔵の本で見ることができます。リカちゃんは歳をとりませんが、時代と共に成長し続けることで、誕生以来変わらぬ人気を得ることができるのでしょう。

  私のリカちゃんは、ちょっと丸顔で髪色も明るくなり、ピアスをつけた3代目リカちゃん人形でした。久しぶりにリカちゃん人形を見て、こどもの頃とはまた違う、リカちゃんの魅力を発見しました。思い出のリカちゃんは何代目のリカちゃん人形だったのか、図書室で確かめてみてください。

『リカちゃん完全カタログ 30th Anniversary』タカラ/監修 ぶんか社/発行(1996年)

『リカちゃんハウスの博覧会 マイホーム・ドリームの変遷』INAX BOOKLET Vol.9 No.1 INAX /発行(1989年)

※『リカちゃん完全読本 50th ANNIVERSARY』講談社/編集 タカラトミー/監修(2017年)は準備中です。 ご利用いただけるまで今しばらくお待ちください。

 

 2017/07/26

『江戸東京たてもの園 前川國男邸復元工事報告書』

169号(江戸東京博物館メールマガジン 2017/7/21 189号掲載)

図書室では、江戸東京博物館の展覧会図録や研究紀要などはもちろん、分館である
江戸東京たてもの園の発行物についても閲覧・コピーのサービスをしています。
たてもの園には、ル・コルビュジエに師事し、数々の傑作を遺した
建築家・前川國男の自邸が移築されています。建物の復元工事の詳細な記録、
図面のほか、関連する様々なことについての聞き取り調査をまとめたものが、
『江戸東京たてもの園 前川國男邸復元工事報告書』です。
たてもの園で、温かみのあるなんとも心地良い自邸を体感し、ビジターセンターの
図書コーナーでこの報告書をご覧ください。さらにじっくり調べたい時は
本館の図書室をご利用ください。
たてもの園で開催中の「世界遺産登録記念 ル・コルビュジエと前川國男」展の
パンフレット、楽しく読める『前川さん、すべて自邸でやってたんですね
前川國男のアイデンティティー』(中田準一 著,彰国社 発行)など、関連図書資料も
併せてご覧いただけます。

 2017/06/17

歴史上の人物と和菓子

168号(江戸東京博物館メールマガジン 2017/6/16 188号掲載)

6月16日は「和菓子の日」。菓子を食べて災いを祓い、招福を祈る旧暦行事「嘉祥(嘉定)」 に由来しています。嘉祥の起源は明らかではありませんが、室町時代には行われており、 江戸時代には宮中・武家から庶民にまで広く伝わっていたようです。 徳川幕府でも家康が駿府城で臣下に菓子を下したのをはじめ、「嘉祥」は重要な式日となりました。江戸時代中頃には、羊羹、饅頭、鶉焼、あこや、熨斗など合わせて2万個以上の菓子が 江戸城大広間に並べられ、登城した大名旗本に配られたといいます。

菓子に関わる資料の収集・調査研究を行っている虎屋文庫が編集し、このたび刊行された 『和菓子を愛した人たち』は、同文庫のウェブサイトで17年にわたり連載されてきた “歴史上の人物と和菓子”から100人を選び加筆修正されたものです。 紫式部と椿餅、織田信長と金平糖、徳川家康と嘉定菓子、松尾芭蕉とところてん、 モースと文字焼き、森鴎外と饅頭茶漬け……と、興味深いタイトルが並びます。 取り上げられた人物は、天下人から市井の文学者まで様々。百人百様のエピソードには お馴染みの菓子もあれば、見たこともない菓子も登場します。 オールカラーで配された図版に自分の舌に残る甘い記憶が重なり、美味しい和菓子を食べたくなること請け合いです。是非お手にとってご覧ください。

・虎屋文庫編『和菓子を愛した人たち』山川出版社 2017年(請求記号:5883 / 34 / 017)

[関連リンク] ・虎屋文庫 https://www.toraya-group.co.jp/toraya/bunko/

 2017/05/24

お記録本屋の『日記』

167号(江戸東京博物館メールマガジン 2017/5/19 187号掲載)

幕末頃の江戸の世相を調べる際、重要な史料のひとつとして挙げられるのが
『藤岡屋日記』です。著者の藤岡屋こと須藤由蔵は神田で古本類を商っていましたが、
一方で、自らが見聞したことに止まらず、幕府の記録から噂話、瓦版などの
膨大な数の事件を記録し、人々に読ませては生活の糧としていたようです。
来る日も来る日も、筆を休めなかった由蔵の姿は「お記録本屋」と称されるほど。
商売とはいえ、その関心は政治、外交、災害、芸能、風俗等々と幅広く、
文化年間から65年もの長きに渡って時代の証言者となっています。
まずは分かりやすい現代文で読んでみるなら『江戸巷談藤岡屋ばなし』、
日記の成立や由蔵について調べるなら『江戸の情報屋』が参考になります。

『近世庶民生活史料 藤岡屋日記』全15巻(近世庶民生活史料 鈴木棠三,小池章太郎/編 三一書房 請求記号:2105 / 61 /1~15)
『江戸巷談 藤岡屋ばなし』正・続(鈴木棠三/著 三一書房 請求記号:2105 / 897 / 1~2)
『江戸の情報屋 幕末庶民史の側面』(吉原健一郎/著 日本放送出版協会 1978年 請求記号:2105 / 193 / 78)

 2017/04/26

日本人のしゃれ好き

166号(江戸東京博物館メールマガジンwindow open 2017/4/21 186号掲載)

幕末に来日したワーグマンによって創刊された『ジャパン・パンチ』は、外国人の目からみた日本風刺の漫画を掲載、「ポンチ絵」の語源となっています。明治に入ってからは『団団珍聞』(まるまるちんぶん)などが刊行されますが、そこに掲載されているのは時局・政局などを題材にしたパロディー漫画です。

これらの漫画を集めて解説した本は数々ありますが、その中で『風刺漫画で日本近代史がわかる本』(草思社・2011年)が目に留まりました。

同書は書名のとおり、近代以降、歴史上有名な事項を題材に描かれた風刺漫画を編年式に紹介しながら日本近現代史をみるというものです。今からちょうど140年前、国内最後の内戦「西南戦争」のところには、『団団珍聞』から「諸新聞社で戦地の絵図を出し升(ます)から弊社でも真似をしました」という「熊本近傍の笑(絵)図」がとりあげられています。中には、例えば熊(熊本)の絵が描かれていて、「鹿の児(鹿児島)がいくらさわいでもへい気だろう」と言っていたりします。

今から10年以上前のニューズレター50号で、江戸の判じ物(判じ絵)版画の本をとりあげたことがあります。判じ物は、例えば2冊の本の表紙に「は」の字が4つ書いてある絵があってこれを「日本橋」(=2本は4)と読ませる、といった具合のものです。

ワーグマンの影響もあり、日本での風刺漫画は定着・定番化したと言えると思いますが、それより前から日本人はパロディーとか、かけことばとか、広くしゃれ好きでした。近代と近世、その「クドさ」(笑)を比べてみるのもおもしろいと思います。