江戸時代に褌(ふんどし)を貸し出すレンタル業があった?(2010年)

2015/06/08

大正時代に発行された【資料1】「こしかたばなし(2)」によると、文久年間江戸に暮らした老人から筆者が聴いた懐古談として、二百四十八文で店から褌を買い、汚れたら六十文添えて持っていくと、洗濯済みの代わりの褌を渡してくれる店があったと記している。これを褌の洗濯屋とみなすか、褌を貸す商売とみなすかによって、質問に対する答えは分かれるところである。また、【資料1】では「其洗濯屋は何処であるのかを聴かなかったが、それらの洗濯屋はどの辺に何年頃まであったものであろうか」と締めくくられている。この商売が具体的に江戸のどの地域で行われていたものか、また一般的なものだったのかについては、当館の所蔵資料には裏付けとなる江戸時代の資料が見つけられなかったこと、【資料1】自体が大正時代の発行で伝聞に基づいていることなどから、あったと断定するには資料不足である。

 

(回答プロセス)

【資料2】『お江戸の意外な商売事情 リサイクル業からファストフードまで』は【資料1】を出典にしている。
【資料3】『図説大江戸おもしろ商売』は損料屋(そんりょうや:様々な品を貸し出すレンタル業のような商売)について記述があるが、褌を貸す(洗濯する)商売については書いていない。
【資料4】~【資料10】の文献は江戸時代の諸職業について書かれているが、褌を貸し出す商売については言及なし。

(参考資料)

  • 【資料1】『彗星 江戸生活研究』 第1巻(大正15年5月号) 雑誌叢書 5 ゆまに書房 昭和59年復刻(「こしかたばなし(2)」森沢瑞香著所収) p.126
  • 【資料2】『お江戸の意外な商売事情 リサイクル業からファストフードまで』 PHP文庫 中江克己著 PHP研究所 2007年 3843/B134/007   (【資料1】を出典にしている)
  • 【資料3】『図説大江戸おもしろ商売』 北嶋廣敏著 学習研究社 2006年 6721/103/006 p.142   (損料屋ついて記述あるが、褌については言及なし。)
  • 【資料4】『大江戸商売ばなし 庶民の生活と商いの知恵』 PHP文庫 興津要著 PHP研究所 1997年 721/B77/97
  • 【資料5】『定本江戸商売図絵』 三谷一馬著 立風書房 1986年 3843/79/86
  • 【資料6】『守貞謾稿 第1~5巻』 喜多川守貞著 朝倉治彦,柏川修一校訂編集 東京堂出版 1992年 3821/212/1~5
  • 【資料7】『商売往来風俗誌』 小野武雄編著 展望社 1983年 3843/74/83
  • 【資料8】『江戸あきない図譜』 高橋幹夫著 青蛙房 1993年 6721/61/93
  • 【資料9】『江戸商売往来』 興津要著 プレジデント社 1993年 6721/6/93
  • 【資料10】『時代小説職業事典 大江戸職業往来』 歴史群像編集部編 学研教育出版 2009年 3843/138/0009

 

(関連事例)

東京都立中央図書館「日本におけるレンタル業、リース業のはじまりはいつか。江戸時代、褌や袴を貸したと聞いたことがあるが本当か。『年表で見るモノの歴史事典 上・下』(ゆまに書房 1995)、『明治事物起源事典』(至文堂 1968)をみたがわからなかった。」https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000049764 (最終アクセス日:2025/12/1)

 

(レファレンス協同データベース版)http://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000073644window open