司書のオススメ図書紹介

当室に所蔵する書籍の中から、司書がオススメ図書をピックアップします。
書籍の見どころや豆知識もご紹介しておりますので、ぜひご利用ください。

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2017年

 2017/06/17

歴史上の人物と和菓子

168号(江戸東京博物館メールマガジン 2017/6/16 188号掲載)

6月16日は「和菓子の日」。菓子を食べて災いを祓い、招福を祈る旧暦行事「嘉祥(嘉定)」 に由来しています。嘉祥の起源は明らかではありませんが、室町時代には行われており、 江戸時代には宮中・武家から庶民にまで広く伝わっていたようです。 徳川幕府でも家康が駿府城で臣下に菓子を下したのをはじめ、「嘉祥」は重要な式日となりま した。江戸時代中頃には、羊羹、饅頭、鶉焼、あこや、熨斗など合わせて2万個以上の菓子が 江戸城大広間に並べられ、登城した大名旗本に配られたといいます。

菓子に関わる資料の収集・調査研究を行っている虎屋文庫が編集し、このたび刊行された 『和菓子を愛した人たち』は、同文庫のウェブサイトで17年にわたり連載されてきた “歴史上の人物と和菓子”から100人を選び加筆修正されたものです。 紫式部と椿餅、織田信長と金平糖、徳川家康と嘉定菓子、松尾芭蕉とところてん、 モースと文字焼き、森鴎外と饅頭茶漬け……と、興味深いタイトルが並びます。 取り上げられた人物は、天下人から市井の文学者まで様々。百人百様のエピソードには お馴染みの菓子もあれば、見たこともない菓子も登場します。 オールカラーで配された図版に自分の舌に残る甘い記憶が重なり、美味しい和菓子を食べたく なること請け合いです。是非お手にとってご覧ください。

・虎屋文庫編『和菓子を愛した人たち』山川出版社 2017年(5883/34/017)

[関連リンク] ・虎屋文庫 https://www.toraya-group.co.jp/toraya/bunko/

 2017/05/24

お記録本屋の『日記』

167号(江戸東京博物館メールマガジン 2017/5/19 187号掲載)

幕末頃の江戸の世相を調べる際、重要な史料のひとつとして挙げられるのが
『藤岡屋日記』です。著者の藤岡屋こと須藤由蔵は神田で古本類を商っていましたが、
一方で、自らが見聞したことに止まらず、幕府の記録から噂話、瓦版などの
膨大な数の事件を記録し、人々に読ませては生活の糧としていたようです。
来る日も来る日も、筆を休めなかった由蔵の姿は「お記録本屋」と称されるほど。
商売とはいえ、その関心は政治、外交、災害、芸能、風俗等々と幅広く、
文化年間から65年もの長きに渡って時代の証言者となっています。
まずは分かりやすい現代文で読んでみるなら『江戸巷談藤岡屋ばなし』、
日記の成立や由蔵について調べるなら『江戸の情報屋』が参考になります。

『近世庶民生活史料 藤岡屋日記』全15巻(近世庶民生活史料 鈴木棠三,小池章太郎/編 三一書房2105/61/1~15)
『江戸巷談藤岡屋ばなし』正・続(鈴木棠三/著 三一書房 2105/897/1~2)
『江戸の情報屋 幕末庶民史の側面』(吉原健一郎/著 日本放送出版協会 1978年 2105/193/78)

 2017/04/26

日本人のしゃれ好き

166号(江戸東京博物館メールマガジンwindow open 2017/4/21 186号掲載)

幕末に来日したワーグマンによって創刊された『ジャパン・パンチ』は、外国人の目からみた日本風刺の漫画を掲載、「ポンチ絵」の語源となっています。明治に入ってからは『団団珍聞』(まるまるちんぶん)などが刊行されますが、そこに掲載されているのは時局・政局などを題材にしたパロディー漫画です。

これらの漫画を集めて解説した本は数々ありますが、その中で『風刺漫画で日本近代史がわかる本』(草思社・2011年)が目に留まりました。

同書は書名のとおり、近代以降、歴史上有名な事項を題材に描かれた風刺漫画を編年式に紹介しながら日本近現代史をみるというものです。今からちょうど140年前、国内最後の内戦「西南戦争」のところには、『団団珍聞』から「諸新聞社で戦地の絵図を出し升(ます)から弊社でも真似をしました」という「熊本近傍の笑(絵)図」がとりあげられています。中には、例えば熊(熊本)の絵が描かれていて、「鹿の児(鹿児島)がいくらさわいでもへい気だろう」と言っていたりします。

今から10年以上前のニューズレター50号で、江戸の判じ物(判じ絵)版画の本をとりあげたことがあります。判じ物は、例えば2冊の本の表紙に「は」の字が4つ書いてある絵があってこれを「日本橋」(=2本は4)と読ませる、といった具合のものです。

ワーグマンの影響もあり、日本での風刺漫画は定着・定番化したと言えると思いますが、それより前から日本人はパロディーとかかけことばとか、広くしゃれ好きでした。近代と近世、その「クドさ」(笑)を比べてみるのもおもしろいと思います。