浮世絵(錦絵)は、ひとつの絵柄につき何枚ずつ摺られていたのか。(2003年)

2015/06/08

浮世絵、特に錦絵と呼ばれる多色刷りの木版画は、絵師・彫師・摺師の三者の分業により完成します。摺師が1日に摺る分量を“一杯”と呼び、普通200枚前後とされています。売れ行きがよく、追加注文を受ければ二杯、三杯・・・と版を重ねました。『浮世絵鑑賞事典』(高橋克彦著,講談社, 7218/B332/87)には「十杯(2,000枚)も売れれば評判の良かった部類」で「歌川広重の東海道の連作(「東海道五十三次」)は、爆発的な好評により、作によっては五十杯(10,000枚)以上も摺ったと伝えられる」とあります。 『浮世絵の鑑賞基礎知識』(小林忠・大久保純一著,至文堂,7218/285/94 p191)では、一番数多く売られた(摺られた)浮世絵は、絵柄の山の稜線が消えるほど版木が摩耗していることから「葛飾北斎の『赤富士』(「富嶽三十六景凱風快晴」)ではないか」と推測されています。また、『図説浮世絵入門』(稲垣進一編,河出書房新社,7218/8/90,p6)によると「売れ筋の商品は最初から200枚以上の見込み生産をする」こともあったようです。 一般に「初摺」といわれる最初の一杯(200枚)は絵師の指示通りに摺られますが、追加注文の「後摺」は、摺師の一存に任せる習わしがありました。「後摺」では、急ぎの場合はぼかしや版を少なくしたり、色味に絵師よりも摺師の感覚が出てしまうこともあったようです。(『図説浮世絵入門』・『浮世絵事典(中)』(画文堂,7218/1/2)) (参考資料) 『浮世絵鑑賞事典』(高橋克彦著 講談社 1987年 7218/B332/87) 『浮世絵の鑑賞基礎知識』(小林忠・大久保純一著 至文堂 1994年 7218/285/94) 『図説浮世絵入門』(稲垣進一編 河出書房新社 1990年 7218/8/90) 『浮世絵事典(中)』(画文堂 1990年 7218/1/2) 『浮世絵 カラー版徹底図解』(田辺昌子監修 新星出版社 2011年 7218/507/0011) (p.144) 『知識ゼロからの浮世絵入門』(稲垣進一監修 幻冬舎 2011年 7218/486/0011) (p.35) (備考) 浮世絵の製作工程は江戸東京博物館常設展示「出版と情報」のコーナーや『図表でみる江戸・東京の世界』(江戸東京博物館)で、摺りの工程は「Kids web Japan バーチャル・カルチャー」 http://web-japan.org/kidsweb/ja/index.html の浮世絵( http://web-japan.org/kidsweb/ja/virtual/ukiyoe/index.html )ページで見られます。(2014/3/31確認) (レファレンス協同データベース版)http://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000013881