江戸時代の甘酒の製法について。2種類あると聞いたが。冬に飲むイメージと、夏に飲むイメージがあるのはなぜか?(2019年)

2019/07/16

(回答)

まず農林水産省ホームページの過去の消費者相談事例(平成29年12月)にも甘酒には米麹と酒粕による2種類の作り方があることは書かれていますが、『江戸グルメ誕生』(講談社・2010年)p.202には、一つは“米の飯に米麹を混ぜて発酵” “麹さえあれば家庭でもつくることができ、四季を問いません”とあり、もう一つは“酒糟に砂糖を加えてつくる” “新酒のできる冬場しか酒糟が手にはいらないので、冬限定”とあります。
『随筆辞典』1衣食住編(東京堂出版・1960年)p.13“甘酒”で調べると、江戸随筆「卯花園漫録」に花麹による甘酒の製法が書かれています。また、江戸随筆「塵塚談」に“あま酒は冬のものなりと思ひけるに、近頃は四季ともに商ふ事になれり”とあります。「塵塚談」は文化11(1814)年に著されたので、夏にも甘酒を飲めるようになったのは江戸時代後期ということになります(同様のことは『江戸グルメ誕生』にも書かれています)。
しかし一方、『近世風俗志(守貞謾稿)』1(岩波書店・1996年)p.277“甘酒売り”には、“京坂は専ら夏夜のみこれを売る” “江戸は四時ともにこれを売り”とあります。「守貞謾稿」も江戸時代後期に成ったものですが、京都・大坂ではもっぱら夏のみだったということになり、地域差もみられます。
甘酒は夏の季語、『江戸川柳飲食事典』(東京堂出版・1996年)p.234“甘酒”には、“甘酒は照る六月に煮商ひ”という句がみられます。

 (参考資料)

『江戸グルメ誕生』(山田順子著・講談社・2010年)請求記号:3838/219/010

『随筆辞典』1衣食住編(柴田宵曲編・東京堂出版・1960年)請求記号:9145/14/1

『近世風俗志(守貞謾稿)』1(喜田川守貞著 宇佐美英機校訂・岩波書店・1996年)請求記号:3821/B333/1

『江戸川柳飲食事典』(渡辺信一郎著・東京堂出版・1996年)請求記号:3838/113/96

 (備考)

農林水産省HP(2019.7.7確認)http://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/1712/02.html